またまたHPのこのコーナーを開けてくれた方から「浅利ちゃん!今月もまだ同じ文ヨ」としかられました。ごめんなさ~い。
はい!2月20日から大阪入りし、お稽古に入り新歌舞伎座での3月1日初日で27日千秋楽「天童よしみ特別公演」に出演.28日帰京しましたあ。29日15個の楽屋と滞在したホテルの私物の荷が届き、解体、分別そして何回もに分けての洗濯にバタバタし、満開の桜の毎年の花見コースも雨上がりのたった一日の晴天の日に駆け足で廻り、慌しい日を過しております。
さて、さて「天童よしみ公演」は忘れられない公演となりました!香津代は歌手の方が座長のひと月公演に参加するのははじめてでした。天童さんの唄や声に深い味があり「すばらしいなあ」とは思っていたものの、まさかご一緒の舞台に出演出来るとは思いもよらず、昨年の秋そのお話を受けた後、新宿コマ劇場公演で公演中の天童さんにご挨拶に伺いました折、とても気さくで好感度100%という感じの良さにホッとしたのでした。
お稽古がはじまって2~3日たった時、天童さんが〝ぜひ出演して頂きたかったのです。今回可能になって本当に嬉しいです。よろしくお願いします〞とおしゃって下さり「ヒエー!嬉しい!」と私は驚きました。どこかで私を見ていて下さったのでしょうか?
私の事などご存知ないと小さくなっておりましたのに!
頂いた役はまたとても良い役で事件の渦中の女〞浪花屋のお孝〝という大店の内儀です。
各場面で色々な役の方々がお孝の事を話してくれるので5回出る場面の度に役どころをがんばって演じなくともお客様はしっかりと私の役がイメージ出来ているのです。いわゆる儲け役という訳です。芝居所も十分有り、座組も気持の良い方ばかりで本当にチームワークも良く楽しい日々でした。
天童さんの謙虚な爽やかな姿勢、不屈ですごい体力に感服。やはりあれだけの力でトップを走る方は素晴らしい気力・体力・努力だなあと今さらながらの学習をさせて頂き、天童さんが大好きになりました!
公演は毎日昼夜二回公演が二日続くと三日目には昼のみという風でした。
天童さんが涙いっぱいためての私とのからみの芝居の場面が有り、香津代は毎回天童さんの演技に胸がいっぱいになり涙がこみ上って来〝天童さん!なにか深い思い出があるんだなあ!なんと感性の素晴しい方だろう〝と!
そして27日の千秋楽は12時開演ですが、客入り前の11時に舞台の方でスタッフ、出演者、制作の方々と、新歌舞伎座の川瀬社長と天童座長とのご挨拶とで千秋楽の集いがあり、それまで化粧を終えておかねばならず、朝9時に楽屋に入った香津代に助手の留美ちゃんが「浅利さん!今朝の新聞で天童座長のお父様が3月7日にお亡くなりになっておられた記事が出てましたよ」と顔をひきつらせ伝えてくれた。〝エッ?!〞そして香津代は〝アッ!〞と鳥肌がたったのでした、、、、、!
「そうだったのね!あの場面で涙がいっぱいだったのはお父様の事があったからだ!」
とわかったのでした。
その場面の紅頭巾役の天童座長の台詞が(自害しようとする香津代の役・お孝にむかって)「お前がいなくなったら、お染は誰と父親の思い出を語れば良いのだ?思い出は一緒に語り合う相手が居てこそ懐かしく楽しいものだ。一人で抱えていても淋しいだけだぞ!」と云うのです。
なんと、なんとあの毎回の涙は、実際のお父様との事だったのですね。本当にすごいですね。本当にすごいですね!
明るく楽しい芝居と唄のオンステージで、その日の満員のお客様に十分楽しんで頂こうというのに、唄の時のトークでもお父様の事に毎日ふれるなんてどんなにお辛いか、また客席のお客様も出演者もどうしても沈んでしまった事と思います、、、、、だからマスコミにも舞台関係者にもお父様の御逝去を伏せて、千秋楽まで自分の気持だけに収めるなんて本当に責任感の強さ、囲りへの思いやりの深さにまたまた感服!
千秋楽の朝マスコミにも発表したのでタガが外れたのか、その日の芝居のあの場面の天童座長の演技は涙がたまっているどころかボロボロ涙がこぼれ、それを受けて香津代はもう泣けて泣けて自分の台詞が云えない程になりました。
第二部の唄のオンステージが終ると会場が割れんばかりの〝拍手・拍手・拍手!〝そしてアンコールと続き盛り上がったのです。それから出演者が私服で全員出演で、主だった役者がマイクで一言ずつ話(香津代もマイクが廻って来ました)をして、そして緞帳が降りた後またまたアンコール!一列目に並んでいた香津代はアンコールで新曲「幸せはすぐそこに」を唄う天童さんに鳥肌が立つ程感動!目の前にあのお声での唄を聞いているのが夢のようでした!やっと緞帳が降り、そのまま舞台上で手締めをして川瀬社長と天童座長の挨拶となり、天童さんが最愛のお父様の話をなさった時にはもう涙はピーク!私たち出演者もピークでしたあ!
天童さんの「辛い忘れる事の出来ない公演でした!」の言葉通り香津代にとっても忘れる事の出来ない公演となったのでしたあ!
平成20年卯月吉日 香津代